妊娠中に飛行機に乗っても大丈夫??

妊娠中に飛行機に乗っても大丈夫?

妊娠中に飛行機を利用したい方は多いのではないでしょうか。

妊娠が分かる前から計画していた仕事の出張、ハネムーンや海外・国内旅行、里帰り出産で実家へ帰省するのに飛行機で移動しなければいけない方もいると思います。
最近は、「マタ旅」と言って赤ちゃんが産まれる前に旦那さんと2人きりでというマタニティ旅行も流行っているようです。
しかし、妊娠中に飛行機に搭乗して大丈夫なのでしょうか?
妊娠中はいつからいつまで飛行機に乗れるのか?
母体や赤ちゃんに影響がないのか、どのようなことに気を付けなければいけないのかをご紹介致します。

妊娠中の身体への影響やリスクは?

妊娠中の身体への影響やリスクは?

妊婦さんがに飛行機に乗る場合は、体調に問題がなく、直前の健診で異常なく経過が順調なことが前提です。

飛行機は地上とは異なり、高度1万メートル上空を飛行するために体に様々なストレスがかかる特殊な環境となります。

飛行機は、飛行する高度が上昇するほど気圧が低下します。飛行機が上空を飛んでいるとき、機内の気圧は地上に比べて約70~80%低くなり、富士山の5合目付近と同じくらいの気圧になります。特に離発着時15~30分の間に気圧の変化や酸素濃度の低下が起こり、呼吸が苦しくなたったり、胸の圧迫、耳鳴りや頭痛が起こるなど体の不調が起こりやすくなります。母体が息苦しくなると胎児も酸素不足になり、先天性異常のリスクも高まりますので、注意が必要です。

また、気圧の変化で体内で膨張した空気が内蔵や体の組織を圧迫し痛みを生じることがあります。胃や腸内のガスが膨らみ、子宮を圧迫することで、腹痛や出血につながったケースもあるようなので、飛行機に乗る前や機内では炭酸飲料は控えた方がいいです。

地球上には宇宙や大地から降り注ぐ自然放射線を常に受けています。日常生活でも知らないうちに放射線を受けています。高度1万2千メートルで飛ぶ飛行機は、地上よりも宇宙からの放射線による被ばくの影響を受けやすく1時間あたり約0.005mSv、東京とニューヨークの往復1回で約0.2mSvの放射線を浴びています。しかし、飛行機で浴びる上空での放射線は、おなかの赤ちゃんに影響が出るほどの量ではありませんので、心配する必要はありません。

空港で飛行機に乗る前には、保安検査を受けなければいけません。妊娠中は病院でのX線検査は胎児に影響があるのでNGとされています。検査時に使用される検査装置のゲートは、金属探知機ですので、妊娠中でも体に悪影響を及ぼすことはありません。国際線の一部では、電波によってセキュリティーチェックを行うものが導入されていますが、こちらも使用させている電波は携帯電話の電波より弱く、人体に影響はないとさえています。手荷物検査はX線検査ですが、手荷物専用なので安心してください。海外の空港でX線を使用したボディースキャナーを利用しているところもあります。事前に航空会社や旅行会社に問い合わせておくと安心ですね。

妊娠中は、妊娠していないときの約6倍も血栓症になりやすいとされています。血栓症の1つの肺静脈塞栓症は、エコノミークラス症候群とも呼ばれ、限られた座席で長時間同じ体勢で座りっぱなしが続くと、足の血管に血行不良が起こって血液が固まり、血栓ができてしまう疾患です。肥満や喫煙習慣、下肢の静脈瘤、足の手術や骨折の既往が危険因子とされています。
妊娠中に大きくなったお腹で長時間座りっぱなしになるため、おなかの大きな静脈や下肢静脈といった大血管がうっ血しやすくなります。また、妊娠中は胎児に送る血液や用水を健全に保つために、ただでさえ水分が多く必要ですが、大きくなった子宮などに血管が圧迫され血液循環も悪くなりがちなため、むくみやすくなります。

妊娠中は大きくなった子宮に膀胱が圧迫されてトイレが近くなります。エコノミー症候群の予防のためにも水分補給は大切です。こまめに水分補給をしてトイレを我慢しないように気を付けましょう。

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妊娠初期は飛行機に乗れる?

妊娠初期は飛行機に乗れる?

妊娠2~4ヶ月(妊娠4週~15週)の妊娠初期の飛行機利用には特に制限はありません。妊娠に気づかないまま飛行機に乗ってしまったという方もいるかもしれません。

しかし、妊娠初期は、胎児の器官が形成されるとても大切な時期です。飛行機に乗ることで流産の危険性が高まるという報告はありません。しかし、妊娠初期は、ささいな負担でも母体に与える影響が大きく、突然の出血が起こりやすく、流産の98%が妊娠初期に起こると言われていることからも、少しでも体調に不安があるときは飛行機の利用はなるべく避けた方がいいでしょう。もし、飛行機の中でそうした事態になった場合、処置が遅れる可能性があります。できるだけ安定期まで控えた方が安心です。

妊娠初期は、つわりや吐き気や体がだるかったり体調が変わりやすい時期です。閉塞した空間である飛行機の中で具合が悪くなってしまうかもしれません。
また、同じ姿勢で長時間いることを強いられる飛行機の中では、筋肉が硬直し血流の流れが悪くなり、エコノミークラス症候群になることがあります。妊婦さんは血流の流れが悪く血栓が生じやすいので、エコノミークラス症候群には注意が必要です。
普段は乗り物酔いしない人でも、妊娠中は揺れやすい機内で酔いやすくなることもあります。飛行機の座席シートの匂い、機内サービスの飲み物や食べ物の匂い、風通しの悪さでつわりが悪化するかもしれません。

飛行機の利用は、フライト時間以外にも、搭乗まで手続きに時間がかかります。飛行機を利用する移動は、時間に余裕を持った行動が必要です。

妊娠に気づかないうちに飛行機に乗ってしまった場合、胎児に影響がないか不安に思うかもしれませんが、産婦人科を受診して特に問題がなければ、神経質になりすぎなくても大丈夫です。

安定期~いつまで乗れるの?

安定期~いつまで乗れるの?

妊娠中期の5~7カ月(妊娠16週~27週)は安定期と言われます。そのころには、つわりもおさまり体調が安定してきて、赤ちゃんの胎盤も完成している時期なので、妊娠経過に異常がなければ、飛行機に搭乗するのに適した時期です。

しかし、お腹が大きくなってからだと、おなかに圧迫されて血流が悪くなりエコノミークラス症候群が起きやすく、動きにくかったり、頻尿や貧血になりやすいので、お腹が大きく目立つ前の妊娠6ヶ月くらいが飛行機搭乗する時期としては一番いいでしょう。
安定期でも、つわりが続く方もおり、個人差はあります。体調に不安があれば控えるべきですし、必ず主治医の許可をもらい、相談しましょう。念のためおなかの張り止めや痛み止めを処方してくれる場合もあります。

妊娠後期の8~10カ月(28週~40週)は、各航空会社は、出産予定日を含め28日以内に搭乗する際は、医師の診断書を提出する必要があるとしています。
里帰り出産の場合は、里帰り先の産婦人科での受信回数が2回以上必要のため、妊娠9カ月(32週)までには実家に帰った方がいいと言われています。

また、国内線では「出産予定日の7日以内」、国際便では「出産予定日の14日以内」になると、医師の同伴が必要になるので注意する必要があります。

診断書は各航空会社のホームページよりダウンロードできますので、出産予定日の28日以内にどうしても搭乗しなければいけない場合は、事前に印刷して必要事項を医師に書いてもらい空港に持っていきましょう。「診断書」はご搭乗の7日以内(ご搭乗日を含めて)に発行された「お客様が航空旅行を行われるにあたり、健康上支障がない」という旨、医師が明記したものです。

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国内旅行、国内線の場合

国内旅行、国内線の場合

空港についたら、航空会社に妊娠中であることを伝えるために専用のサポートカウンターで搭乗手続きをするといいです。出産予定日を伝え、搭乗口、機内、到着後に何か手伝って欲しいことがあればお願いすることができます。機内で荷物を上の収納に入れるのを手伝ってほしいことや、エチケット袋を多めにほしい、クッションやひざ掛けを準備しておいてほしいなど遠慮せずに伝えましょう。最近では、ネットで事前に座席指定していることがほとんどです。予約していた時は空いてる場所を選んでいても当日混んでいることもあります。空席があれば、トイレの近くや、まわりが空いている座席に変更してもらうこともできるため、カウンターで相談してみましょう。

国内線はほとんどの航空会社のホームページに妊娠中の搭乗についての規制が記載されています。
妊娠経過に問題がない場合、36週まで条件なしで搭乗可能です。
出産予定日から28日以内は医師の診断書が必要となっています。
出産予定日から7日以内の搭乗は医師の同伴が必要となります。
過去に早産の経験がある方、出産予定日がはっきりしていない方や双子以上の妊娠をしている方は、搭乗前に事前の手続きが必要です。

航空会社ごとに規定があるため、搭乗予定の航空会社の規定をチェックし、心配な点があれば、専用のサポートデスクに問い合わせてみてください。

海外旅行、国際線の場合

海外旅行、国際線の場合

国際線も国内線と基本的に同じ条件です。
妊娠経過に問題がない場合、36週まで条件なしで搭乗可能です。
出産予定日から28日以内は医師の診断書が必要です。
国内線と違うのは、出産予定日から14日以内は医師の同伴が必要であること、早産経験がある妊婦さん、多胎児を妊娠している場合は診断書が必要です。
国際線については、航空会社によって妊娠中の搭乗規制が大きく異なることがあるので、詳細については早めに利用する航空会社のホームページなどで確認しましょう。

妊娠中に飛行機を利用する場合は、フライト時間は5時間くらいまでが望ましいとされています。
新婚旅行でハワイを計画していたけど、妊娠が分かってしまった場合などは、長時間のフライトになるので、時期や行き先を変更することをおすすめします。
治安面に不安があったり、医療環境が整っていない地域は避けるようにしましょう。

妊娠中に海外旅行を計画しているなら、必ず医師に相談し、許可をもらってからにしましょう。

母子手帳と保険証は必ず身に着けておき、旅行先での万が一の時に受診出きる産院を事前に調べておくといいでしょう。
海外で、妊娠していることを伝えるために、英語のフレーズを伝えれるように準備しておきましょう。
”I am having baby.”    “I am carrying baby.” 「私は妊娠中です。」
“I am   〇months pregnant.”   「私は妊娠〇ヶ月です。」

また、慣れない土地での水や食事で食中毒になったりしないよう食べ物や飲み物には細心の注意を払い、感染症や病気に気を付けてください。食中毒になると、下痢や嘔吐、発熱や頭痛などを引き起こし、胎児に悪影響を与えるので注意が必要です。


海外での医療費はかなり高額になります。念のため海外旅行保険に入っておきましょう。保険には残念ながらほとんどの場合、出産、早産、流産など妊娠にかかわる費用は保証されません。補償内容をしっかり確認してから加入してください。

観光プランは余裕をもって立ててください。気温の高低差がある地域や標高の高い観光地は避けた方がいいでしょう。長時間のバス移動はさけてください。

妊娠中の海外旅行は、それだけのリスクがあることを踏まえながら、万全の対策をして行く必要があります。

里帰り出産で飛行機を利用したいとき

里帰り出産で飛行機を利用したいとき

里帰り出産を予定しているかたは、担当の産婦人科医さんに相談して時期を決めた方がいいのですが、妊娠37週以降は、いつ陣痛がきてもおかしくないので、飛行機での里帰りの移動は妊娠35週までにするのが安心でしょう。

長距離移動は思ったより体に負担がきます。荷物は最小限にしておくと、身軽に動けて身体への負担が少ないです。里帰り荷物は、あらかじめ宅配便で実家に送っておきましょう。

多胎児を妊娠している場合は、単胎児妊婦より早産になる可能性が高く、帝王切開の確立が高いため、里帰りは30週までに済ませておくのがお勧めです。
多胎児妊娠中の飛行機は、ほとんどの医師は「多胎児妊娠は安定期がないのでおすすめしません」と答えるようです。どうしてもの場合は自己責任となるのでしょうが、多胎児妊娠はリスクが高いのです。

飛行機を使って里帰りした場合、出産後に自宅に戻る場合も飛行機を使う方が多いと思います。生まれた赤ちゃんが飛行機に乗れるのは、国内線も国際線もほとんどが生後8日から可能です。意外と早い時期から乗れますが、自宅に戻る時期は、赤ちゃんが無事に育っていることと、ママの身体が十分に回復した時期を見計らって決めましょう。
一般航空会社の国内線では、幼児は搭乗日の年齢が生後8日~2歳は、大人一人につき幼児1名を膝に乗せて、無償で飛行機に乗ることができます。赤ちゃんの料金が無償だから予約の必要がないわけではないので、赤ちゃんの分も必要な手続きを必ずとり、航空券を発券しましょう。赤ちゃん用のバシネットというベッドの利用ができるサービスもあるので、予約の際に航空会社にお問い合わせください。

妊娠中に受けられる航空会社のサービス

妊娠中に受けられる航空会社のサービス

各航空会社で妊婦さん向けのサービスを用意しているところが多くあります。
予約時や、空港に着いたら航空会社サポートデスクに妊娠中であることを伝えましょう。
まず、妊婦さんや小さな子供連れの場合は優先的に一足先に機内に案内してもらえる優先搭乗の事前改札サービスがあります。
行列に並ばずにスムーズに搭乗できるので、早めに搭乗口へ行っておきましょう。
狭い機内の通路を進むのに、大きなお腹では人とすれ違う時もよけるのも苦労しますが、先に搭乗するとまっすぐに自分の席に行けます。
機内では、荷物の収納などを手伝ってくれるので、近くの客室乗務員にも妊娠中であることを伝えておきましょう。
満席でなければ、チェックインの際も周りが空席の座席を用意してくれることがあります。
お腹が大きくシートベルトが苦しい時には、乗務員さんに伝え、延長ベルトを借りて使用しましょう。

航空会社によって、妊婦さんや子連れのフライト中の過ごし方が書いてあるサポートブックを搭乗時にもらうこともできます。

JALでは、妊娠中のお客様をお手伝いする「ママおでかけサポート」があります。

www.jal.co.jpANAでは、妊娠中のお客様に「ANAらくのりサービス」があります。ANAオリジナル「マタニティマークタグ」がもらえたり、羽田空港第二ターミナルでは電動カートサービスがあります。第二ターミナルは、一番遠い搭乗口だと保安検査場から10~15分ほどかかる場合があるため、体調に不安がある妊婦さんは、搭乗当日にカウンター係員に問い合わせしてください。

www.ana.co.jp

自分が利用する航空会社にお問い合わせの上、サービスを事前に確認しておくといいでしょう。

妊婦さんが飛行機に乗るときのポイント

妊婦さんが飛行機に乗るときのポイント

妊娠中、飛行機に乗るときのポイントをまとめてみました。

①エコノミークラス症候群対策として、長時間同じ体勢にならないようにたまに体を動かしましょう。
足を伸ばして足首をまわしたり、機内で30~1時間ごとに歩いたり、ふくらはぎをもんだりして、こまめにストレッチやマッサージを行いましょう。

②機内が揺れたりつわりで気分が悪くなったりしたときのために、いつでも嘔吐に対応できるようエチケット袋は多めに用意しましょう。

③機内サービスを利用してこまめに水分補給をしましょう。妊婦さんが脱水症状を起こすと、胎盤の血流量が減り、赤ちゃんへの影響がでてしまいます。機内は湿度を低く設定しているのでとても乾燥しています。水分摂取は、エコノミークラス症候群の予防にもなります。体を冷やさないように、お湯や温かいスープを飲むといいですね。

④何かあったときにフライトアテンダントにすぐ声を掛けやすいように、そしてトイレに行きやすいように通路側でトイレに近い席を予約しましょう。バルクヘッド席といって、自分の席の足元が広いスペースのある座席もあるので、予約時に確認してみるといいでしょう。

⑤お腹の圧迫を防ぐために、シートベルトはお腹ではなく骨盤あたりで装着しましょう。服装は、胸やお腹周りを締め付けないゆったりとした服を着ましょう。

⑥母子手帳は携帯しましょう。気分が悪くなった時でも、母子手帳で健康状態や出産予定日などの重要事項を伝えることができます。緊急時の対応が必要となったときのために、健康保険証と母子手帳は持ち歩きましょう。

機内は乾燥するのでマスクをしましょう。潤い保持と機内食や飲酒などのニオイ対策にもなります。飛行機は多くの人が乗っていて、密閉空間になっているため、風邪やインフルエンザなどの感染対策にもなります。

マタニティーマークを目立つ場所につけておくと、何かあったときにすぐに周りの方に妊婦と分かってもらえ安心です。

まとめ

まとめ

国内移動の場合は、飛行機ではなく新幹線の利用も考える方もいると思います。新幹線のほうが、万が一乗車中に具合が悪くなったら途中下車することが可能です。
しかし、遠方への移動は新幹線や船より飛行機の方がずっと早くて快適です。移動時間が短いということは、体への負担も少なくて済みます。
妊娠中に飛行機に乗る予定がある方は、体調の良い時期を選び、必ず乗る前に産婦人科の医師に相談して、許可がおりてからにしましょう。

妊娠中に飛行機に乗る場合は、時間に余裕をもって行動できるように慎重に計画し、事前にしっかり準備しましょう。

妊婦さんの身体の負担や、おなかの赤ちゃんの状態を一番に考えて、無理せずに楽しい旅になりますように。